Plan 9とGo言語のブログ

主にPlan 9やGo言語の日々気づいたことを書きます。

Plan 9 CのARGBEGIN、ARGENDマクロ

Plan 9のCは独自のライブラリを持っていて、stdio.hのようなANSIライブラリもAPE(ANSI/POSIX Environment)として存在してはいるが、基本的にはPlan 9独自のライブラリを使う方が好まれる。ANSI Cとの違いは挙げればいくつもあるのでPlan 9 Cを知らない人には伝わりづらいけれども、Goの標準ライブラリにもPlan 9のCライブラリの面影が部分的に残っているので、Goの基礎的なパッケージ(bufio, utf8, strconv, stringsなど)に似ているといえば伝わるかもしれない。いくつか挙げると、Plan 9 Cではバッファリングを行うライブラリはlibbioにまとまっているが、libbio

#include <bio.h>

int Binit(Biobuf *bp, int fd, int mode);
int Brdline(Biobufhdr *bp, int delim);

は、ほとんどGoの

package bufio

func NewReader(rd io.Reader) *Reader
func (b *Reader) ReadBytes(delim byte) ([]byte, error)

と同じ使用感になっているし、

#include <libc.h>

int tokenize(char *str, char **args, int maxargs);

も、言語の違いこそあるものの、Goのstrings.Fieldsとだいたい同じように使える。また、UTF-8Plan 9から出てきたものなので当然といえば当然だけど、Plan 9 CはGoと同様に、Unicode文字を扱う場合はRune*1を使う。他にも探せば似たものはいくつもあるけれど、詳細には取り挙げない。

コマンドラインパーサ

Plan 9独自のCライブラリには、コマンドラインオプションを解析するARGBEGINマクロとARGENDマクロがある。これらはコマンドラインオプションを扱うときに使用するマクロで、典型的にはEARGFなどと組み合わせて以下のように使う。

#include <u.h>
#include <libc.h>

int debug;
char *file;

void
usage(void)
{
    fprint(2, "usage: %s [-f file] [-v] [arg ...]\n", argv0);
    exits("usage");
}

void
main(int argc, char **argv)
{
    int i;

    ARGBEGIN {
    case 'f':
        file = EARGF(usage());
        break;
    case 'v':
        debug++;
        break;
    default:
        usage();
    } ARGEND

    print("debug: %d\n", debug);
    print("file: %s\n", file);
    for(i = 0; i < argc; i++)
        print("argv[%d]: %s\n", i, argv[i]);
    exits(nil);
}

特筆すべきところは、ARGENDを抜けた後のargv[0]は、コマンド名ではなくオプションを除いた最初の引数を参照している。上記コードを実行結果は以下のようになる。

% opts -f file -v a b c
debug: 1
file: file
argv[0]: a
argv[1]: b
argv[2]: c

% opts -f # 引数が足りない場合
usage: opts [-f file] [-v] [arg ...]

ロングオプションは対応していないけれど、Plan 9のコマンドはオプションがあまりないので、これで充分なんだろうと思う。cat(1)はオプションが無いし、cp(1)は3個、ls(1)でも12個しかない。

usage: ls [-dlmnpqrstuFQ] [file ...]

usage: cp [-gux] fromfile tofile

サブコマンド

Plan 9の標準シェルであるrc(1)は、$path配下のディレクトリも検索対象となるので、

% fossil/conf -w file /dev/sd01/fossil
% auth/factotum
% upas/fs

のように関連するコマンドをディレクトリでまとめることが普通となっていて、サブコマンドが使われることはほとんどない*2が、ARGBEGINマクロを使ってサブコマンドを実装できるので参考程度に書いておく。単純に、サブコマンド関数の引数がargcargvになっていればARGBEGINマクロを利用できる。

#include <u.h>
#include <libc.h>

void cmdinit(int, char **);
void cmdprint(int, char **);

struct {
    char *name;
    void (*cmd)(int, char **);
} cmds[] = {
    { "init", cmdinit },
    { "print", cmdprint },
};

int debug;
char *file;

void
usage(void)
{
    fprint(2, "usage:\t%s init [-y]\n", argv0);
    fprint(2, "\t%s print\n", argv0);
    exits("usage");
}

void
main(int argc, char **argv)
{
    int i;

    ARGBEGIN {
    case 'f':
        file = EARGF(usage());
        break;
    case 'v':
        debug++;
        break;
    default:
        usage();
    } ARGEND
    if(argc == 0)
        usage();

    for(i = 0; i < nelem(cmds); i++)
        if(strcmp(cmds[i].name, argv[0]) == 0){
            cmds[i].cmd(argc, argv);
            exits(nil);
        }
    usage();
}

void
cmdinit(int argc, char **argv)
{
    int yes;

    yes = 0;
    ARGBEGIN {
    case 'y':
        yes++;
        break;
    default:
        usage();
    } ARGEND
    print("init: debug=%d yes=%d\n", debug, yes);
}

void
cmdprint(int argc, char **argv)
{
    ARGBEGIN {
    default:
        usage();
    } ARGEND
    print("print: file=%s\n", file);
}

*1:以前は16bitだったけど今は22bitのはず

*2:OS標準のコマンドでは全く見た記憶がない

systemd-logindにSuspend key pressedと記録されてサスペンドする問題とthermal-conf.xmlの書き方

12インチMacBookLinuxをインストールして使っていたが、負荷が上がったときにMacBookサスペンドする問題に困っていた。サスペンドが発生した時刻には、systemd-logindのログに

systemd-logind[299]: Suspend key pressed.

のようなイベントが記録されていた。このログは、LinuxカーネルKEY_SLEEPと定義されたキーが押されたときにsystemd-logindbutton_dispatch関数が記録しているものだった。button_dispatchの主な処理を引用する。

static int button_dispatch(sd_event_source *s, int fd, uint32_t revents, void *userdata)
{
    Button *b = userdata;
    struct input_event ev;
    ssize_t l;

    l = read(b->fd, &ev, sizeof ev);
    switch(ev.code){
    case KEY_SLEEP:
        log_struct(LOG_INFO, "Suspend key pressed.", ...);
        manager_handle_action(b->manager,
            INHIBIT_HANDLE_SUSPEND_KEY,
            b->manager->handle_suspend_key,
            b->manager->suspend_key_ignore_inhibited,
            true);
        break;
    case KEY_SUSPEND:
        log_struct(LOG_INFO, "Hibernate key pressed.", ...);
        ...
    }
}

KEY_SLEEP定数はLinuxのヘッダファイルで定義されたもので、カーネルsystemdではSuspendが意味するものが異なっているところは少し難しいが、とにかくスリープのようなキーが押されたことを意味する。

#define KEY_SLEEP 142 /* SC System Sleep */
#define KEY_SUSPEND 205

上のコードを読む限りでは、button_dispatchはキーイベントをread(2)しているだけなので、少なくともなんらかのハードウェアが原因だろうと思ったが、MacBookには電源ボタンはあるけれど押していないし、なんならリッドクローズドで使っている時は電源ボタンもないキーボードを使っているので、誤って物理キーを押したわけではない。

systemd-logindでサスペンドを無効化してみる

systemd-logindサスペンドキーが押されたときの動作を/etc/systemd/logind.confで変更できる。例えば以下のようにignoreを設定するとキーイベントを無視できる。

-#HandleSuspendKey=suspend
+HandleSuspendKey=ignore

これは実際に、systemd-logindmanager_handle_actionで、HANDLE_IGNOREの場合はすぐに関数を抜けているところからもイベントを無視している様子が読み取れる。

 /* If the key handling is turned off, don't do anything */
if (handle == HANDLE_IGNORE) {
    log_debug("Handling of %s (%s) is disabled, taking no action.",
        inhibit_key == 0 ? "idle timeout" : inhibit_what_to_string(inhibit_key),
        is_edge ? "edge" : "level");
    return 0;
}

しかし試したけれど残念ながら、状況は改善されなかった。負荷をかけるとすぐにサスペンドしてしまった。

デスクトップ環境でサスペンドを無効にする

GNOMEKDEなどのデスクトップ環境は独自の電源管理を行っているので、これを無効化してみる。GNOMEの場合は、関連する設定は以下の通り。

$ gsettings get org.gnome.settings-daemon.plugins.power power-button-action
'suspend'
$ gsettings get  org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-battery-type
'suspend'
$ gsettings get org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-ac-type
'suspend'
$ gsettings get org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-battery-timeout
200
$ gsettings get org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-ac-timeout
1200

これらの設定を無効にする。

$ gsettings set org.gnome.settings-daemon.plugins.power power-button-action nothing
$ gsettings set  org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-battery-type nothing
$ gsettings set org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-ac-type nothing

これも、設定したあとで負荷をかけて様子をみたが、再発してしまったので関係がなかった。

CPU周波数を落とす

12インチMacBookファンレスなので、熱の問題だろうと当たりをつけて対策する。このハードウェアのデフォルトはintel_pstateドライバのpowersaveガバナー(Governor)だった。

$ grep . /sys/devices/system/cpu/cpu?/cpufreq/scaling_driver
/sys/devices/system/cpu/cpu0/cpufreq/scaling_driver:intel_pstate
/sys/devices/system/cpu/cpu1/cpufreq/scaling_driver:intel_pstate
/sys/devices/system/cpu/cpu2/cpufreq/scaling_driver:intel_pstate
/sys/devices/system/cpu/cpu3/cpufreq/scaling_driver:intel_pstate

$ grep . /sys/devices/system/cpu/cpu?/cpufreq/scaling_governor
/sys/devices/system/cpu/cpu0/cpufreq/scaling_governor:powersave
/sys/devices/system/cpu/cpu1/cpufreq/scaling_governor:powersave
/sys/devices/system/cpu/cpu2/cpufreq/scaling_governor:powersave
/sys/devices/system/cpu/cpu3/cpufreq/scaling_governor:powersave

Intel Turbo Boostを無効にする

Turbo Boostは使っていないコアの電源を落とす替わりに、特定コアのクロックを上げる仕様らしい。

Turbo Boostはno_turboファイルに1を書き込むことで無効にできる。

$ echo 1 | sudo tee /sys/devices/system/cpu/intel_pstate/no_turbo

TurboBoostを無効にすると、突然サスペンドすることはなくなったが、クロックが最大1.4GHzまで落ちてしまうので普段使いするには少々厳しい性能になってしまった。

cpuの最大クロック数を制限する

cpupowerを使ってクロックを落とす方法。

$ sudo pacman -S cpupower
$ sudo cpupower frequency-set -u '2.2GHz'

これで全てのコアが最大2.2GHzに制限される。ただしこの設定は再起動すると消えるので、永続化したい場合はsystemdで実行する。cpupowerをインストールしていれば、/etc/default/cpupowerに設定ファイルがあるので利用するといい。

-#max_freq="3GHz"
+max_freq="2.2GHz"

その後、systemctlでサービスを有効にする。

$ systemctl enable cpupower.service

クロックを変更して実験した結果、2.2GHzまで落とさなければサスペンドが発生していた。実験したときは5月だけど、夏はもっと下げなければだめかもしれない。もっと下げると、TurboBoost無効時の1.4GHzとそれほど変らず、性能の劣化が気になる。

Thermaldで冷却する

一般的にはインストールして起動するだけで適切な動作をする。Ask Ubuntuの回答によると、このモードはZero Configuration Modeといって、DTS温度測定センサーやIntel P-stateを使って適切な調整をする。

coretempドライバのドキュメントは以下のURLにあった。

だけれども、MacBookの場合はZero Configuration Modeでは冷却されている様子がなかったので、/etc/thermald/thermal-conf.xmlで設定することにした。この方法は、上記Ask Ubuntuの回答によるとUser defined configuration modeにあたる。Thermaldに関係するマニュアルは以下の2つ。

thermal-conf.xml(5)には設定例もあるので、読めばだいたい雰囲気で分かるのだけど、難しかったところを少しまとめる。thermal-conf.xmlは大きく分けて3つの要素で構成される。

  • ThermalSensor
  • CoolingDevice
  • TripPoint

ThermalSensor

センサーは温度を計測する場所のことで、たとえばCPUコアなどがそれに該当する。センサーを扱うためには/sys以下のファイルなどを<ThermalSensor>要素で設定が必要になるが、/sys/class/thermal以下のデバイスはデフォルトで組み込まれているので、特に設定を追加せずとも利用できる。12インチMacBookの場合は以下の通り。

$ grep . /sys/class/thermal/thermal_zone*/type
/sys/class/thermal/thermal_zone0/type:BAT0
/sys/class/thermal/thermal_zone1/type:x86_pkg_temp

BAT0はバッテリーで、x86_pkg_tempはCPUパッケージかな。/sys/class/thermal以下のファイル郡はACPI由来のもので、マニュアルではThermal sysfsと呼ばれている。/sys/class/thermalカーネルドキュメントは以下のURLにある。

Thermal sysfs以外にも、MacBookには/sys/devices/platform/coretemp.0/subsystem/devices/applesmc.768などのセンサーがある。これらThermal sysfs以外のセンサーを参照して温度管理をする場合は、<ThermalSensor>要素を使った設定が必要になる。sensorsコマンドを実行すると、他にどのようなセンサーがあるのか調べられる。

$ sensors
BAT0-acpi-0
Adapter: ACPI interface
in0:           8.58 V  
temp:         +32.8°C  
curr1:         0.00 A  (avg =  +0.00 A)

coretemp-isa-0000
Adapter: ISA adapter
Package id 0:  +44.0°C  (high = +100.0°C, crit = +100.0°C)
Core 0:        +43.0°C  (high = +100.0°C, crit = +100.0°C)
Core 1:        +43.0°C  (high = +100.0°C, crit = +100.0°C)

applesmc-isa-0300
Adapter: ISA adapter
TA0V:         +29.0°C  
TB0T:         +32.5°C  
TB1T:         +32.0°C  
TB2T:         +32.5°C  
TBXT:         +32.5°C  
TC0E:         +43.8°C  
TC0F:         +46.0°C  
TC0P:         +39.5°C  
TC1C:         +43.0°C  
TC2C:         +43.0°C  
TCGC:         +43.0°C  
TCHP:         +37.0°C  
TCSA:         +44.0°C  
TCXC:         +43.5°C  
TH0A:         +37.2°C  
TH0B:        -127.0°C  
TH0C:        -127.0°C  
TH0F:         -47.8°C  
TH0R:         -47.8°C  
TKBV:         +36.8°C  
TM0P:         +38.8°C  
TPCD:         +39.0°C  
TPMV:         +31.8°C  
TW0P:         +37.2°C  
Th0N:         +36.2°C  
Th0R:         +31.8°C  
Ts0P:         +32.2°C  
Ts0S:         +36.0°C  
Ts1P:         +30.5°C  
TsCH:         +47.5°C  
TsFD:         +60.0°C  
TsFS:         +53.0°C  
TsHS:          +2.0°C  
TsTH:          +3.0°C  
TsTP:         +50.0°C  
TsWS:         +49.0°C  

BAT0-virtual-0
Adapter: Virtual device
temp1:        +32.8°C  

nvme-pci-0100
Adapter: PCI adapter
Composite:    +39.9°C  

sensorsコマンドで出力された結果の意味は、以下の記事が参考になると思う。

CoolingDevice

冷却デバイスは温度を下げるための機構またはハードウェアのこと。空冷ファンは当然だけど、CPUのクロックを落とすしくみのような機構もCoolingDeviceに該当する。これもセンサーと同様に、/sys/class/thermal以下のデバイスは何も書かなくても利用できる。12インチMacBookの場合は以下の通り。

$ grep . /sys/class/thermal/cooling_device*/type
/sys/class/thermal/cooling_device0/type:Processor
/sys/class/thermal/cooling_device1/type:Processor
/sys/class/thermal/cooling_device2/type:Processor
/sys/class/thermal/cooling_device3/type:Processor
/sys/class/thermal/cooling_device4/type:intel_powerclamp
/sys/class/thermal/cooling_device5/type:LCD

また、マニュアルによると、以下のデバイスもCoolingDeviceとして使えるらしい。

  • rapl_controller
  • intel_pstate (CPU周波数ドライバ)
  • cpufreq
  • LCD (モニターのバックライトを薄暗くする)

それぞれがどんな動作をするのかは、ArchWikiのCPU 周波数スケーリングが詳しい。

TripPoint

この要素で、センサーと冷却デバイスをまとめて温度管理を行う。例えば以下のような設定になる。

<TripPoint>
    <SensorType>x86_pkg_temp</SensorType>
    <Temperature>75000</Temperature>
    <type>passive</type>
    <ControlType>PARALLEL</ControlType>
    <CoolingDevice>
      <index>1</index>
      <type>rapl_controller</type>
      <influence>50</influence>
      <SamplingPeriod>1</SamplingPeriod>
    </CoolingDevice>
</TripPoint>

<Temperature>は冷却を開始するセンサーの温度を設定する。75000の場合は75℃以上になったら開始する。<type>は以下の3種類。

  • active
  • passive
  • max

activeは、空冷ファンなどコストのかかる(追加の電源やノイズなどが発生する)を使う。passiveならパフォーマンスを落として温度を下げる。maxについてはよくわからない。

<SamplingPeriod>を設定すると、前回の変化から設定した秒が経過するまでは温度の変化を検出しなくなる。未設定または0なら常に検出する。

設定例

現在設定している/etc/thermald/thermal-conf.xmlを貼っておく。だいたい期待どおりに動いているが、長時間の負荷を与えたときはまだ稀にサスペンドする場合があるので、もう少し調整は必要だと思う。

<?xml version="1.0"?>
<ThermalConfiguration>
  <Platform>
    <Name>Macbook 2017</Name>
    <ProductName>*</ProductName>
    <Preference>QUIET</Preference>   <!-- 空冷ファンなどactiveなデバイスを使わず冷却する -->
    <ThermalZones>
      <ThermalZone>
        <Type>x86_pkg_temp</Type>
        <TripPoints>
          <TripPoint>
            <SensorType>x86_pkg_temp</SensorType>
            <Temperature>75000</Temperature>
            <type>passive</type>
            <ControlType>PARALLEL</ControlType>
            <CoolingDevice>
              <index>1</index>
              <type>rapl_controller</type>
              <influence>50</influence>
            </CoolingDevice>
            <CoolingDevice>
              <index>2</index>
              <type>intel_pstate</type>
              <influence>40</influence>
            </CoolingDevice>
            <CoolingDevice>
              <index>3</index>
              <type>intel_powerclamp</type>
              <influence>30</influence>
            </CoolingDevice>
            <CoolingDevice>
              <index>4</index>
              <type>cpufreq</type>
              <influence>20</influence>
            </CoolingDevice>
            <CoolingDevice>
              <index>5</index>
              <type>Processor</type>
              <influence>10</influence>
            </CoolingDevice>
          </TripPoint>
        </TripPoints>
      </ThermalZone>
    </ThermalZones>
  </Platform>
</ThermalConfiguration>

以下のURLにも設定例が書かれているので、参考になる。

FIDO U2Fセキュリティキーを使ってSSHする

今年の5月に、GitHubがFIDO U2Fセキュリティキーを利用したSSH接続に対応したので、手元にあったTitan Security Keyで試してみました。

Titan Security Keyを買ったときの話はこちら。

SSH鍵の生成

SSHでFIDO U2Fセキュリティキーを参照するためにはOpenSSH 8.2以上が必要です。Arch Linuxでは少なくともopenssllibfido2の2つが必要なのでpacmanでインストールします。

$ sudo pacman -S openssh libfido2
$ ssh -V
OpenSSH_8.6p1, OpenSSL 1.1.1k  25 Mar 2021

また、鍵ペアはecdsa-skまたはed25519-skで作っておく必要があります。セキュリティキーを接続した状態でssh-keygenを使って作成しましょう。YubiKeyなど、この時点でセキュリティキーへのタッチを要求される場合もあるそうですが、Titan Seciruty Keyではタッチは要求されず、パスフレーズを聞かれただけでした。

$ ssh-keygen -t ecdsa-sk -C user@example.org
Generating public/private ecdsa-sk key pair.
You may need to touch your authenticator to authorize key generation.
Enter file in which to save the key (/home/lufia/.ssh/id_ecdsa_sk): 
Enter passphrase (empty for no passphrase): 
Enter same passphrase again: 
Your identification has been saved in /home/lufia/.ssh/id_ecdsa_sk
Your public key has been saved in /home/lufia/.ssh/id_ecdsa_sk.pub
SHA256:h7O7eF62nwJCHxnnelOX0QUlufa144r/gjOZWBWhmnM lufia@linux-pc
(snip)

ここで、セキュリティキーを接続せずにssh-keygenを実行すると、

Key enrollment failed: invalid format

というエラーで終了します。

ecdsa-skまたはed25519-sk(以下めんどうなのでecdsa-skだけを表記します)では、他のものと同様にid_ecdsa_skid_ecdsa_sk.pubの2つファイルを生成しますが、他のものと異なり秘密鍵はセキュリティキーに保存*1されていて、id_ecdsa_skファイルには、セキュリティキーへの参照などの盗まれても安全な情報だけが含まれるようです。id_ecdsa_skのフォーマットはデフォルトではRFC 4716 - The Secure Shell (SSH) Public Key File Formatです。

id_ecdsa_skファイルに保存されている具体的な情報については面倒なので追ってませんが、秘密鍵をセキュリティキーに要求する部分のコードはsshconnect2.c:1232-1270の辺りなので、ここでsshkey_is_sksshkey_typeするために必要な情報が含まれているのでしょう。興味があればload_identity_filesshkey_load_private_type辺りを読んでみてください。

SSH鍵を使う

ecdsa-sk鍵を用意できたら、GitHubのSettings → SSH and GPG keysに公開鍵(id_ecdsa_sk.pub)を登録します。ここはよくある手順なので省略。

登録が終わったら、以下のコマンドで確認してみましょう。

$ ssh -T -i id_ecdsa_sk git@github.com
Enter passphrase for key 'id_ecdsa_sk': ***
Confirm user presence for key ECDSA-SK SHA256:h7O7eF62nwJCHxnnelOX0QUlufa144r/gjOZWBWhmnM
User presence confirmed
Hi lufia! You've successfully authenticated, but GitHub does not provide shell access.

実行例だと分かりづらいですが、

Confirm user presence for key ECDSA-SK SHA256:h7O7eF62nwJCHxnnelOX0QUlufa144r/gjOZWBWhmnM

のところで止まるので、セキュリティキーにタッチすると先に進みます。セキュリティキーが接続されていない場合は、

sign_and_send_pubkey: signing failed for ECDSA-SK "id_ecdsa_sk": invalid format

というエラーで接続に失敗します。

感想

最近は、GitHubへのアクセスではアクセストークンを使っているし、SSHでリモートログインする機会もだいぶ減りましたが、とはいえたまに使うことはあるので、ファイルを盗まれても安全で、TOTPほど面倒でもないのはいいですね。ただ、セキュリティキーが手元にないときは何もできないので忘れないようにしましょう。

セキュリティキー便利なので使っていきたいんですが、意外と対応しているサービスは少ないですね*2AWS CLIでもFIDO U2Fセキュリティキーがサポートされたら嬉しいのですが、コンソールログインでは使えるけどCLIでは使えず、MFAデバイスは1つだけしか登録できない制約があるので、現状ではTOTPするしかないのが悲しい*3

*1:Titan Security Keyは複数の鍵を管理する機能を持っていないと思いますが

*2:Mackerelも対応していないけどそこは見なかったことに...

*3:Mackerelも1つしか登録できないけどこれも忘れてください...

デスクトップ環境をKDE 5 Plasmaデスクトップに変更した

先月の記事ではGNOMEをインストールしましたが、KDE 5 Plasmaデスクトップの方が見た目も操作感も好みだったので変更しました。WebブラウザとターミナルとPlan 9ツールの利用が主な使い方なので、どれを使ってもそんなに変わらないのですが。

やったこと

まず必要なパッケージを追加します。Waylandバックエンドを使うのでplasma-wayland-sessionも入れておきます。plasma-metaはメタパッケージといって複数のパッケージがまとまったものです。

$ sudo pacman -S plasma-meta sddm plasma-wayland-session

# 入ってなければ入れる
$ sudo pacman -S noto-fonts noto-fonts-cjk

KDEアプリケーションはこれだけ入れました。kde-applicationsはパッケージグループで、こちらも複数のパッケージをまとめたものです。

$ pacman -Qge kde-applications
kde-applications ark
kde-applications dolphin
kde-applications gwenview
kde-applications kcalc
kde-applications konsole
kde-applications ksystemlog
kde-applications okular

pacmanのメタパッケージとパッケージグループ

上でみたように、パッケージグループとメタパッケージはどちらも複数のパッケージをまとめるものですが、利用方法は全然別のものです。

パッケージグループ

  • pacman -gフラグでグループの絞り込みができる
  • パッケージグループをインストールする時に必要なパッケージを選択できる
  • 選択したパッケージは明示的インストールとして扱う
  • グループに新しい依存パッケージが追加されても追従しない

メタパッケージ

  • パッケージ名に-metaが付く(全てではないらしい)
  • メタパッケージをインストールする時はパッケージの選択はできない
  • メタパッケージを明示的インストールとして、個別のパッケージは依存パッケージとして扱う
  • メタパッケージに新しい依存が増えた場合、メタパッケージをアップデートするとインストールされる

SDDM

ログイン画面でSDDMを使うようにします。どのディスプレイマネージャを使うのかについては、/etc/systemd/system/display-manager.serviceシンボリックリンクになっていて、SDDMの場合は参照先が/usr/lib/systemd/system/sddm.serviceとなります。必ず1つしか有効にできないので、GDMは無効にします。

$ sudo systemctl disable gdm.service
$ sudo systemctl enable sddm.service

/etc/sddm.conf.d/uid.conf

SDDMはデフォルトにより、UIDが60000以上のユーザを扱いません。だけどもsystemd-homedでユーザを管理している場合、UIDは60000より大きな値が使われるので、SDDMにユーザが表示されずログインできません。なのでUIDの最大値を変更します。

[Users]
MaximumUid=60350

/etc/sddm.conf.d/hidpi.conf

12インチMacBookRetinaディスプレイなので、HiDPIオプションも有効にしておきます。

[Wayland]
EnableHiDPI=true

[X11]
EnableHiDPI=true

Firefox

WaylandバックエンドのPlasmaデスクトップでは、FirefoxはXWaylandで動作するようですが、HiDPIディスプレイで使うと全体的にぼやけたり滲んだりといった表示になります*1FirefoxはWaylandに対応しているので、環境変数で切り替えましょう。

~/.pam_environment

+MOZ_ENABLE_WAYLAND DEFAULT=1

ところで、このファイルはpam_envによるものみたいですね。マニュアルはpam_envにありました。

ショートカットキー

Plasmaデスクトップの場合でも、GTKベースアプリケーションはgsettings(dconf)の設定を参照します。Firefoxも同様なので、以下の設定は必要です。

$ gsettings set org.gnome.desktop.interface gtk-key-theme Emacs

IBus

GNOMEの場合は何もしなくてもIBusを使えていましたが、KDEでは自分で書いてあげる必要があるようです。~/.config/autostart以下に設定を作ります。

~/.config/autostart/ibus-daemon.desktop

[Desktop Entry]
Type=Application
Name=IBus Daemon
Exec=ibus-daemon -drx --panel=/usr/lib/kimpanel-ibus-panel

~/.config以下にはautostart-scriptsディレクトリもあります。autostartは拡張子.desktopなiniファイルを管理する場所で、autostart-scriptsシェルスクリプトなどを管理するために使うようです。

KDEシステム設定

基本的にはデフォルトのまま使って慣れる派ですが、どうしても無理なものをシステム設定で変更しました。変更した箇所だけ列挙。

  • キーボードの設定でCapsLockをControlに置き替え
    • キーボード→詳細→Ctrl position/Caps LockをCtrlとして扱う
  • トラックパッドをいつも通りに設定
    • タップしてクリック
    • タップしてドラッグ
    • Tap-and-drag lock
    • スクロールの方向を反転(自然なスクロール)

ショートカット→KRunner/KRunnerで、KRunner*2の開始をCtrl+Spaceでもできるようにしようかと思ったけど、これは慣れの問題なのでAlt+Spaceのまま使うことにしました。

気になりメモ

WaylandバックエンドでPlasmaデスクトップを使う場合、スリープからの復帰や外部ディスプレイ接続などで突然クラッシュすることがあります。Waylandでの不具合などは以下でまとめられています。

GNOME関連のパッケージをアンインストールしてもgsettings list-schemasで確認するとorg.gnome.*スキーマが残っています。これらのスキーマgsettings-desktop-schemasによって追加されたもので、このパッケージはphonon-qt5-gstreamergtk3などが依存しているようでした。

*1:どうして滲むのかはHiDPI support in Chromiumで説明されていました

*2:macOSにおけるSpotlightのようなもの

12インチMacBookにArch Linuxをインストールした

手元のデスクトップ環境をLinuxに切り替えました。2009年頃からmacOS(当時はMac OS X)を使っていたけど、QEMUFUSEを不自由なく使える方がPlan 9との相性が良いので、Linuxの方がいいかなと思ったのでした。

やったこと

MacBook10,1 (Retina, 12-inch, 2017)にArch Linuxをインストールしました。このハードウェアではネットワークなど一通り使えていますが、バージョンによっては使えないケースもあるようです。MacBook Proの対応状況はState of Linux on the MacBook Pro 2016 & 2017にまとまっていますが、MacBookのものは無いので、近いハードウェアから推測する必要があります。

バックアップを取得

事前にMacBookのバックアップを取得しましょう。Time Machineがいちばんお手軽ですし、Linuxにデータを渡すことも考えるならexFATなディスクにコピーしておくと便利です。

また、macOSインストーラを用意しておくと、困った場合に安心です。Mac App StoreからOSインストーラをダウンロードすると/Applicationsインストーラが作られるので、以下のコマンドを実行します。

% sudo /Applications/Install\ macOS\ Big\ Sur.app/Contents/Resources/createinstallmedia --volume /Volumes/Mobile

詳細は、公式ドキュメントのmacOS の起動可能なインストーラを作成する方法を参照してください。

Arch Linuxインストーラを準備

Arch Linuxのイメージをダウンロードから探して、USB インストールメディアの「BIOSUEFI ブータブル USB」に書かれている手順を実行します。

# macOS
% diskutil unmountDisk /dev/diskX
% sudo dd if=archlinux-2021-04-01-x86_64.iso of=/dev/rdiskX bs=1m

# Linux
% sudo dd if=archlinux-2021-04-01-x86_64.iso of=/dev/sdX bs=4M status=progress
% sudo sync

余談ですがこのISOイメージは、ddコマンドを使ってそのままUSBメモリに書き込むだけで使えるように作られています。xorrisoとUEFIブート再び[その1]に詳細が書かれているけれどハック感があって面白いです。

インストール

上で作ったUSBメモリからインストーラを起動して、セットアップしていきます。事前に以下のドキュメントを読んでおくといいでしょう。

MacBook Proのインストール事例だけどこれも参考になりました。

インストーラを起動するとすぐにプロンプトが表示されるので必要なコマンドを入力していけばいいのですが、MacBookの場合はどうやら画面の下数行*1が見切れてしまっているようで、コマンド入力や結果の確認が困難です。なのでsttyで揃えておくと安全です。

stty cols 138 rows 45

まずインターネットへ接続するためWi-Fiの設定をします。ドキュメントはIwdです。この設定はインストーラにおけるネットワークの設定で、再起動すると消えてしまうので、後でもう一度、同じ設定が必要です。

# iwctl
[iwd]# device list
  wlan0      dc:a9:04:xx:xx:xx       on      phy0      station
[iwd]# station dc:a9:04:xx:xx:xx scan
[iwd]# station dc:a9:04:xx:xx:xx get-networks
[iwd]# station dc:a9:04:xx:xx:xx connect SSID
[iwd]# exit

時刻合わせです。これも再起動すると消えるので、後でもう一度設定します。

# timedatectl set-ntp true

準備ができたらパーティションを分割していきます。GPTで管理するので、fdiskではなくgdiskを使います。分割自体は好みでレイアウトすればいいのですが、最初のEFIパーティションはsystemd-bootで利用するのでそのまま残しておきます。手元では、Linux用のパーティションは特に分割などせず、1つだけ作りました。また、スワップファイルの方が便利そうなので、swapパーティションは作りませんでした*2

# gdisk /dev/nvme0n1
...

パーティションの用意ができたらフォーマットします。ここではBtrfsでフォーマットすることにしました。Btrfsのサブボリュームは通常のパーティションと同じようにマウントできるので、スナップショットを利用しやすいように構成する「Snapper推奨レイアウト」があるようですが、まだBtrfsの運用に慣れていないので、トップレベルのサブボリューム(ID=5)を/にマウントします。

# mkfs.btrfs -L rootfs /dev/nvme0n1p2

インストール先となるパーティション/mnt以下にマウントします。ブートローダはsystemd-bootを使うので、EFIパーティション/mnt/bootにマウントしておかないとpacstrapしたときにカーネルなどが/bootに配置されず手動でコピーするなど必要が出てきます。

# mount /dev/nvme0n1p2 /mnt
# mount /dev/nvme0n1p1 /mnt/boot

そのまま必須パッケージを/mntにインストールします。Btrfsを使うのでbtrfs-progsパッケージも含めておきます。

# pacstrap /mnt base btrfs-progs linux linux-firmware

/etc/fstabを更新します。

# genfstab -U /mnt >>/mnt/etc/fstab

genfstabはBtrfsでフォーマットされたファイルシステムを検出した場合にrelatimeオプションを追加します。Linuxはファイルのアクセス時刻を記録しているので、ファイルを読んだだけでもディスクアクセスが発生します。BtrfsはCoWなファイルシステムなので、ファイルにアクセスするたびにアクセス時刻を更新すると、それだけで複数ページへの更新が発生して効率が悪くなります。マウントの際にrelatimeオプションを与えておくと、ファイルを変更した時だけアクセス時刻が更新されるようになるので、基本的にはこのオプションを設定しておく方が良いと思います。

また、マウント時のオプションで、ページが不要になったときTRIMを行うdiscardオプションもありますが、NVMeの場合はfstrimで定期的にTRIMすることが推奨されているのでdiscardオプションは与えないでおきましょう。

生成した/etc/fstabの確認が終わったらarch-chrootします。

# arch-chroot /mnt

メモ: Btrfsは安定しているのか

ext4ファイルシステムでも困ってはいないけど、スナップショットやCoWなどBtrfsの方が優れている面があります。いくつかのディストリビューションで採用されている反面、相変わらず不安定という話も聞くので、メリットを帳消しにするほど不安定なら、まだ採用したくはありません。

スワップファイルの扱いなど特別な対応が必要なところはあるものの、いくつか記事を読んだ限りでは、単一のディスクを扱う限りは安定していると判断しました。

systemd-boot

ブートローダの選択肢はいくつかありますが、Arch Linuxのドキュメントに、MacBookではいちばん簡単な方法と書かれていたのでsystemd-bootを使いました。ドキュメントはsystemd-bootです。

ここでマイクロコードも一緒にロードしておきましょう。12インチMacBookIntelのCPUなので、パッケージはintel-ucodeです。

# pacman -S intel-ucode
# bootctl --path=/boot install

設定ファイルを2つ作ります。/boot/loader/entries/arch.confカーネル/となるパーティションを設定するものです。UUIDの値は、blkidコマンドで/dev/nvme0n1p2の値を調べました。

title Arch Linux
linux /vmlinuz-linux
initrd /intel-ucode.img
initrd /initramfs-linux.img
options root=UUID=ca7846e4-64bc-4086-ae73-524f5aeb546e rw

ブートしたいカーネルが複数あるなら、このファイルを必要なだけ作ります。次に、ローダ自体の設定です。これは/boot/loader/loader.confに書きます。

default arch
timeout 3
console-mode max
editor no

正しく設定ができていれば、bootctlコマンドで設定した内容を読めるはずです。

# bootctl list
Boot Loader Entries:
        title: Arch Linux (default)
           id: arch.conf
       source: /boot/loader/entries/arch.conf
        linux: /vmlinuz-linux
       initrd: /intel-ucode.img
               /initramfs-linux.img
      options: root=UUID=ca7846e4-64bc-4086-ae73-524f5aeb546e rw

(この時点では、インストーラのエントリがいくつかあるけど再起動すると消える)

systemd-bootに更新があったとき、自動でブートローダも更新できるように/etc/pacman.d/hooks/systemd-boot.hookを設定しておきます。

[Trigger]
Type = Package
Operation = Upgrade
Target = systemd

[Action]
Description = Upgrading systemd-boot...
When = PostTransaction
Exec = /usr/bin/bootctl update

ディスクを暗号化する

ルートパーティションを暗号化する場合は追加でいくつか手順が発生します。暗号化の方法はいろいろありますが、一番簡単な「/boot 以外を素朴に暗号化する」方法を使います。

まずmkfs.btrfsまたはmkfs.ext4する前に、cryptsetupを使って暗号化したディスクを作成します。

# cryptsetup -y -v luksFormat /dev/nvme0n1p2
# cryptsetup open /dev/nvme0n1p2 cryptroot (cryptrootの名前はなんでもいい)

壊れて復旧不能になるのは怖いのでLUKSのヘッダをバックアップします。

# cryptsetup luksHeaderBackup /dev/nvme0n1p2 --header-backup-file luks.img

この後、 /dev/nvme0n1p2 の代わりに /dev/mapper/cryptroot で置き換えてarch-chrootまで進めますが、今のままではブート時に暗号化を解除できないのでいくつか設定が必要です。

まず、一般的には/etc/crypttabパーティションを追加しますが、ルートパーティションの場合はそこには含めません。代わりに/etc/mkinitcpio.confHOOKSkeyboard, keymap, encrypt を追加します。

--- /etc/mkinitcpio.conf.orig
+++ /etc/mkinitcpio.conf
@@ ... @@
-HOOKS=(base udev autodetect modconf block filesystems keyboard fsck)
+HOOKS=(base udev autodetect modconf keyboard keymap block encrypt filesystems fsck)

イメージを再生成します。

# mkinitcpio -p linux

次に、ブート時に暗号を解除させるため、systemd-bootのオプションを設定します。ここでのUUIDは、/dev/nvme0n1p2のUUIDです。

--- /boot/loader/entries/arch.conf.orig
+++ /boot/loader/entries/arch.conf
@@ ... @@
-options root=UUID=ca7846e4-64bc-4086-ae73-524f5aeb546e rw
+options cryptdevice=UUID=ca7846e4-64bc-4086-ae73-524f5aeb546e:cryptroot root=/dev/mapper/cryptroot rw

/etc/fstabからは/dev/mapper以下のディスクを参照するように切り替えます。こちらのUUIDは/dev/mapper/cryptrootのUUIDです。

--- /etc/fstab.orig
+++ /etc/fstab
@@ ... @@
-UUID=ca7846e4-64bc-4086-ae73-524f5aeb546e   /   ext4   rw,realtime   0   1
+UUID=02871ac2-2e51-4f53-96b3-2ddb514c93cf   /   ext4   rw,realtime   0   1

この後は/dev/mapper/cryptrootを使っていきます。これ以外の方法ではLVMを使うなど色々あるので、以下の記事を参照してください。

rootのパスワード

設定しておきます。

# passwd

再起動

ここで一度、再起動します。 root でログインできるようになっているので、ログインして設定を続けます。

ファイルシステムのメンテナンス

定期的にファイルシステムをメンテナンスするタイマーを起動します。マウントオプションのところでも触れましたが、discardオプションではなくfstrimを定期的に実行するよう推奨されるので、systemdのタイマーを有効にします。

# systemctl enable fstrim.timer

また、Btrfsを利用している場合は、定期的なファイルシステムの検査を行うために以下も有効にしておくといいでしょう。@の後にマウントポイントを与えてそれぞれ個別に有効化します。

// ルート(/)にマウントしたファイルシステムを検査
# systemctl enable btrfs-scrib@-.timer

// 他の場所(/home)にマウントしたファイルシステムの場合
# systemctl enable btrfs-scrib@home.timer

ネットワークの設定

上で行ったネットワークの設定をもう一度実施します。こちらは再起動した後で使われるものです。インストーラと異なり、ブート後の環境にはまだiwdパッケージがインストールされていないので、ここで追加しておきます。

# pacman -S iwd

設定自体は上のものと同じですが、以下のコマンドを使うと1行で行なえます。

# iwctl station wlan0 connect <SSID>

SSIDごとに、設定は/var/lib/iwd/<SSID>.<enc>へ保存されます。あとは、ホスト名の設定と、ブート時の再接続を入れておきましょう。それぞれファイルが無ければ作ります。

/etc/hostname

linux-pc

/etc/systemd/network/20-wlan0.network

[Match]
Name=wlan0

[Network]
DHCP=ipv4

コマンドはこのような。

# systemctl enable iwd.service
# systemctl enable systemd-networkd.service
# systemctl enable systemd-resolved.service
# networkctl list

時間の設定

NTPとタイムゾーンの設定です。

# ln -sf /usr/share/zoneinfo/Asia/Tokyo /etc/localtime
# hwclock --systohc

# timedatectl set-ntp true
# timedatectl status

言語の追加

en_US.UTF-8ja_JP.UTF-8を追加します。

# echo 'en_US.UTF-8 UTF-8' >>/etc/locale.gen
# echo 'ja_JP.UTF-8 UTF-8' >>/etc/locale.gen
# locale-gen

これ以降、/etc/locale.confLANGを設定すると日本語化されますが、フォントがない状態でされても文字が読めなくて困るだけなので、これは後で設定します。

systemd-homed

ホームディレクトリの管理もsystemd-homedを使うようにしました。ドキュメントはsystemd-homedです。ついでにvisudoも入れておきます。vimパッケージもありますが、簡単なテキストの編集にしか使わないのでviパッケージで十分でした。

# systemctl enable systemd-homed.service
# homectl create --member-of wheel lufia
# pacman -S vi sudo
# visudo

ディスクを暗号化している場合

LUKSが使える場合、homectl createはデフォルトで/home/$user.homeにLUKSイメージを作成して、ユーザーがログインする時に暗号を解除してマウントする動作をします*3が、そもそもディスクを暗号化している場合は追加で暗号化する意味はそれほどありません*4。なのでディスク自体を暗号化している場合はイメージを作らないオプションを入れるといいと思います。

# systemctl create --storage=directory --member-of wheel lufia

スワップファイルの追加

swapパーティションを作らなかったので、ここでスワップファイルを設定します。Btrfsファイルシステム上にスワップファイルを用意する場合は、CoWや圧縮などされないようにフラグをセットしておく必要があります。このとき、ファイルサイズが0でなければ有効にならないので、必ず0に切り詰めてからセットしましょう。また、スワップファイルが含まれるサブボリュームはスナップショットを取得できなくなるので、別のサブボリュームに作成します。

# btrfs subvolume list /
# cd /
# btrfs subvolume create swap
# chmod 700 /swap

# touch /swap/swapfile
# chmod 600 /swap/swapfile
# chattr +C /swap/swapfile
# fallocate -l 8G /swap/swapfile
# btrfs property set /swap/swapfile compression none

# mkswap /swap/swapfile
# swapon /swap/swapfile

ext4ファイルシステム上にスワップファイルを用意する場合はフラグ設定を省略すればよいです。

# fallocate -l 8G /swapfile
# chmod 600 /swapfile
# mkswap /swapfile
# swapon /swapfile

ファイルを用意したら/etc/fstabにエントリを追加。

/swap/swapfile   none    swap    defaults    0 0

デスクトップ環境

2021-05-16追加: この後でKDEに切り替えました

blog.lufia.org

Waylandを使おうとしているので、色々と面倒が少なそうなGNOMEをインストールしました。

# pacman -S gnome
# systemctl enable gdm
# pacman -S noto-fonts noto-fonts-cjk

これで特に何もしなくても、再起動すればGNOMEのセッションマネージャが使えます。ログイン後に環境変数XDG_SESSION_TYPEをみると、WaylandかX11のどちらが使われているかを調べられます。XDG_SESSION_TYPEx11の場合、セッションマネージャの右下にある設定ボタンからGNOMEを選んでログインするとwaylandに変わります。

ディスプレイの設定

RetinaディスプレイHiDPIディスプレイとも呼ばれるようです。GNOMEでは、デフォルトでサイズ調整は200%と設定されていたと思いますが、好みに応じてGNOMEの設定アプリから変更しましょう。

言語の設定

上で言語の追加をしましたが、グラフィックスを使えるようになったので、必要ならここで切り替えます。

# echo 'LANG=ja_JP.UTF-8' >/etc/locale.conf

スリープでD3coldへ遷移させない

12インチMacBookでは、D3coldへ遷移すると、うまく復帰できない問題があるそうです。実際に試したところ、スリープから復帰したログイン画面でパスワードを入力しても、先へ進むことができませんでした。そのため、D3coldへの遷移を止めます。

d3cold_allowedファイルへ0を書き込むことで無効となりますが、再起動するたびに入力するのは面倒なので、systemdを使って自動化します。まずはユニットファイルを/etc/systemd/system/d3cold-disable.serviceに作りました。

[Unit]
Description=Disables sleep from stopping nvme hardware on MacBook

[Service]
ExecStart=/sbin/d3cold 0
Type=oneshot
RemainAftrExit=yes

[Install]
WantedBy=multi-user.target

ExecStart=で実行しているコマンドは以下の内容です。

#!/bin/bash

v=${1:-0}
echo $v > /sys/bus/pci/devices/'0000:01:00.0'/d3cold_allowed

これを有効にします。

$ sudo chmod +x /sbin/d3cold
$ sudo systemctl enable d3cold-disable.service

サーマルスロットリング

12インチMacBookファンレスなこともあり、Go自身のコンパイルをしていると突然スリープに落ちたりします。それでは困るので、thermald.serviceを有効にします。

# pacman -S thermald
# systemctl enable thermald.service

thermaldは、基本的に何も設定しなくても適切に動作するらしいですが、MacBookファンレスなこともあって、しばらく負荷をかけると

systemd-logind[299]: Suspend key pressed.

というログがjournaldに記録されてサスペンドします。なので明示的に/etc/thermald/thermal-conf.xmlに設定を書きます。この設定では、CPUパッケージの温度が75℃を越えたら色々な方法で温度を下げます。

<?xml version="1.0"?>
<ThermalConfiguration>
  <Platform>
    <Name>Macbook 2017</Name>
    <ProductName>*</ProductName>
    <Preference>QUIET</Preference>
    <ThermalZones>
      <ThermalZone>
        <Type>x86_pkg_temp</Type>
        <TripPoints>
          <TripPoint>
            <SensorType>x86_pkg_temp</SensorType>
            <Temperature>75000</Temperature>
            <type>passive</type>
            <ControlType>PARALLEL</ControlType>
            <CoolingDevice>
              <index>1</index>
              <type>rapl_controller</type>
              <influence>50</influence>
            </CoolingDevice>
            <CoolingDevice>
              <index>2</index>
              <type>intel_pstate</type>
              <influence>40</influence>
            </CoolingDevice>
            <CoolingDevice>
              <index>3</index>
              <type>intel_powerclamp</type>
              <influence>30</influence>
            </CoolingDevice>
            <CoolingDevice>
              <index>4</index>
              <type>cpufreq</type>
              <influence>20</influence>
            </CoolingDevice>
            <CoolingDevice>
              <index>5</index>
              <type>Processor</type>
              <influence>10</influence>
            </CoolingDevice>
          </TripPoint>
        </TripPoints>
      </ThermalZone>
    </ThermalZones>
  </Platform>
</ThermalConfiguration>

設定については以下の記事に書きました。

blog.lufia.org

CPU 周波数スケーリングによると、他にも便利なものはあるようですが、今のところ特には困っていないのでいいかな。

/sys/devices/system/cpu/cpu?/cpufreq/scaling_governorを読むと、どのgovernorがセットされているか調べられますし、/sys/class/thermal/cooling_device?/typeでデバイスの種類が分かります。

$ grep . /sys/devices/system/cpu/cpu?/cpufreq/scaling_governor
/sys/devices/system/cpu/cpu0/cpufreq/scaling_governor:powersave
/sys/devices/system/cpu/cpu1/cpufreq/scaling_governor:powersave
/sys/devices/system/cpu/cpu2/cpufreq/scaling_governor:powersave
/sys/devices/system/cpu/cpu3/cpufreq/scaling_governor:powersave

$ grep . /sys/class/thermal/cooling_device?/type
/sys/class/thermal/cooling_device0/type:Processor
/sys/class/thermal/cooling_device1/type:Processor
/sys/class/thermal/cooling_device2/type:Processor
/sys/class/thermal/cooling_device3/type:Processor
/sys/class/thermal/cooling_device4/type:intel_powerclamp
/sys/class/thermal/cooling_device5/type:LCD

CPUクロックや温度はlscpu/sys/class/thermal/thermal_zone?/tempで読めます。tempファイルの値は、3330033.3℃のようです。

$ lscpu | grep 'CPU MHz'
CPU MHz:                             2084.082

$ grep . /sys/class/thermal/thermal_zone?/temp
/sys/class/thermal/thermal_zone0/temp:33300
/sys/class/thermal/thermal_zone1/temp:43000

再起動

ここで再起動します。ログイン画面が表示されたら、さきほど作成した一般ユーザーでログインしましょう。

ログイン後は主に個人環境に対する設定を行います。

CapsLockをControlにする

実現方法はいくつかありますが、GNOMEの設定で対応しました。もともとlv3:ralt_switchが含まれていたので、そこに追記した形です。

$ gsettings set org.gnome.desktop.input-sources xkb-options "['lv3:ralt_switch', 'ctrl:nocaps']"

サウンドの設定

MacBookでは追加のドライバが必要です。GitHubから12インチMacBook用のドライバをインストールします。

$ git clone https://github.com/leifliddy/macbook12-audio-driver.git
$ cd macbook12-audio-driver
$ sudo ./install.cirrus.driver.sh

MacBook Pro用のドライバもありますが、こちらは12インチMacBookでは認識しませんでした。

Bluetoothの設定

12インチMacBook用のBluetoothドライバです。インストール方法はサウンドの時と同じ。

$ git clone https://github.com/leifliddy/macbook12-bluetooth-driver.git
$ cd macbook12-bluetooth-driver
$ sudo ./install.bluetooth.sh

手元にはBluetoothキーボードトラックパッドがあるので、それぞれ接続しました。ドキュメントはBluetoothにあります。

$ sudo pacman -S bluez bluez-utils
$ sudo systemctl enable bluetooth
$ bluetoothctl
[bluetooth] agent on
[bluetooth] scan on
[bluetooth] devices
[bluetooth] pair 00:00:00:00:00:00
[agent] PIN code: xxxxxx
Pairing successful
[bluetooth] connect 00:00:00:00:00:00
Connection successful

[bluetooth] pair 11:11:11:11:11:11
Pairing successful
[bluetooth] connect 11:11:11:11:11:11
Connection successful

再起動した後に自動接続されるように、/etc/bluetooth/main.confへ設定をしておきます。

[Policy]
AutoEnable=true

外部ディスプレイを繋いでいるときはスリープしない

クラムシェルとかリッドクローズドと呼ばれているものです。/etc/systemd/logind.confを以下のように変更しました。とはいえ、GNOMEによって電源管理されているようなので、この設定がどの程度有効かは分かりません。

--- /etc/systemd/logind.orig 2021-03-29 22:36:55.053860982 +0900
+++ /etc/systemd/logind.conf  2021-03-29 22:56:55.439920429 +0900
@@ -24,8 +24,8 @@
 #HandleSuspendKey=suspend
 #HandleHibernateKey=hibernate
 #HandleLidSwitch=suspend
-#HandleLidSwitchExternalPower=suspend
-#HandleLidSwitchDocked=ignore
+HandleLidSwitchExternalPower=suspend
+HandleLidSwitchDocked=ignore
 #HandleRebootKey=reboot
 #PowerKeyIgnoreInhibited=no
 #SuspendKeyIgnoreInhibited=no

トラックパッド

Waylandではlibinputが動作していて、トラックパッドを接続した後は特に何も設定する必要はありませんでしたが、タップでクリックなどいくつか変更しています。ここは完全に好みです。

$ gsettings list-recursively org.gnome.desktop.peripherals.touchpad
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad tap-button-map 'default'
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad click-method 'fingers'
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad edge-scrolling-enabled false
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad disable-while-typing true
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad two-finger-scrolling-enabled true
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad send-events 'enabled'
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad speed 0.0
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad tap-and-drag true
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad natural-scroll true
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad middle-click-emulation false
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad left-handed 'mouse'
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad tap-to-click true
org.gnome.desktop.peripherals.touchpad tap-and-drag-lock true

日本語入力

一般的に、IBusまたはFcitxのうちどちらかと、MozcまたはSKKのどちらかを組み合わせて使うことになると思います。Linuxのかな漢字変換の興亡SKKが勧められていたので、ここではibus-skkを使うようにします。Mozcの方が簡単だろうけれど、どのみちPlan 9ではSKKを使うことになるし、合わせておくのもいいかなと思ったのでした。

$ sudo pacman -S ibus-skk skk-jisyo

Waylandを使っているので、IBusを使うための環境変数~/.pam_environmentに追加します。

GTK_IM_MODULE DEFAULT=ibus
XMODIFIERS DEFAULT=@im=ibus
QT_IM_MODULE DEFAULT=ibus

Linux デスクトップの環境変数、どこに設定してますか?によると.pam_environmentは非推奨らしいので、今なら homectl update --setenv の方がいいかもしれない。

$ homectl update --setenv GTK_IM_MODULE=ibus --setenv XMODIFIERS=@im=ibus --setenv QT_IM_MODULE=ibus

また、SKKのキーボードレイアウトは日本語配列になっているので、/usr/share/ibus/component/skk.xmllayoutを変更します。

--- /usr/share/ibus/component/skk.orig   2021-03-21 00:03:32.931254445 +0900
+++ /usr/share/ibus/component/skk.xml 2021-03-21 20:26:27.483580937 +0900
@@ -17,7 +17,7 @@
            <license>GPL</license>
            <author>Daiki Ueno &lt;ueno@unixuser.org&gt;</author>
            <icon>/usr/share/ibus-skk/icons/ibus-skk.svg</icon>
-          <layout>ja</layout>
+           <layout>us</layout>
            <longname>SKK</longname>
            <description>SKK Input Method</description>
            <rank>70</rank>

せっかくなので追加の辞書を入れました。

$ git clone https://github.com/tokuhirom/jawiki-kana-kanji-dict.git
$ cd jawiki-kana-kanji-dict
$ echo ';; -*- coding: utf-8 -*-' >~/.config/ibus-skk/SKK-JISYO.jawiki
$ cat SKK-JISYO.jawiki >>~/.config/ibus-skk/SKK-JISYO.jawiki

あとは、ibus-setupの「入力メソッド」にSKKを追加して、そこへSKK-JISHO.jawikiの辞書も追加すれば終わりです。ただし、SKK-JISHO.jawikiは必ずシステム辞書として追加しましょう。ユーザー辞書として追加しても動作はしますが、候補を確定するときすべてのユーザー辞書へ更新が行なわれるらしく、確定する度に2、3秒待たされることになります。

$ ibus-setup

今の設定はこんな雰囲気。

  1. ~/.config/ibus-skk/user.dict (ユーザー辞書)
  2. /usr/share/skk/SKK-JISHO.L (システム辞書)
  3. ~/.config/ibus-skk/SKK-JISHO.jawiki (システム辞書)
  4. localhost:1178 (サーバ)

参考情報

Firefox

Firefoxを使っているので、言語パックも一緒にインストールします。

$ sudo pacman -S firefox firefox-i18n-ja

標準ではCtrl+Hキーに履歴の表示をトグルするショートカットキーが割り当てられていますが、個人的にはCtrl+Hをバックスペースとして使うのでとてもイライラするので変更します。対応するための方法はいくつかありますが、GNOME側でキーテーマをEmacs風なものに変更すると、FirefoxでもCtrl+Hでバックスペースを入力できるようになります。

$ gsettings set org.gnome.desktop.interface gtk-key-theme 'Emacs'

これで、Ctrl+Aで行頭にカーソルを移動させられたりなど好みの挙動になりました。それぞれのキーに何が割り当てられているかは、/usr/share/themes/Emacs/gtk-3.0/gtk-keys.cssを読むとなんとなく分かると思います。

それから、ページ内検索で何もマッチしないときにビープ音が鳴るのはうるさいので、about:configから無効にします。

accessibility.typeaheadfind.enablesound=false

ターミナル

GNOME Terminalのデフォルトサイズ変更とベルを無効化します。gsettingsでもできるらしいけど、UUIDが入っていて面倒なので、GUIでターミナルの設定→プロファイルの文字タブを選んで変更します。

  • 起動時の端末サイズ: 100x50 *5
  • 端末ベルを鳴らす: off

FirefoxCtrl+CでコピーするけどターミナルではCtrl+Shift+Cでコピーするのは、どちらかに統一したいですね。ターミナルはCtrl+Cで割り込みを発生させるので難しいかなと思っていたけれど割り込みはCtrl+Alt+Cでも起こせたので、以下のコマンドでキーマップを変更しました。

$ gsettings set org.gnome.Terminal.Legacy.Keybindings:/org/gnome/terminal/legacy/keybindings/ copy '<Control>c'
$ gsettings set org.gnome.Terminal.Legacy.Keybindings:/org/gnome/terminal/legacy/keybindings/ paste '<Control>v'

これで、どのアプリでも、Ctrl+CでコピーしてCtrl+Vで貼り付けができる。

また、こちらもビープがうるさいので止めます。GNOMEターミナルの設定→プロファイルから、「端末ベルを鳴らす」のチェックを外します。

クリップボード

クリップボードにはPRIMARY*6CLIPBOARDの2種類あるようで、テキストを選択してマウスの中ボタンで扱うような暗黙的なコピーはPRIMARYを参照して、明示的にコピーをする動作はCLIPBOARDを参照するようです。日本語版のWikiより英語版の方が詳しいのでClipboardのSelectionを読みましょう。GNOMEPrimary Selectionにも色々と書かれています。

Waylandでコマンドラインからクリップボードを操作するためにwl-clipboardを入れておきます。

$ sudo pacman -S wl-clipboard

別件で、最後に選択したテキストがマウスの中ボタンでペーストされてしまうのは誤操作の原因になるので止めてしまいます。

$ gsettings set org.gnome.desktop.interface gtk-enable-primary-paste false

Firefoxは別の設定になるようです。about:configmiddlemouse.pastefalseに切り替えます。

バックアップ

rsyncでコピーする方法がRsync によるフルシステムバックアップで紹介されていますが、rsyncは転送先でそのままファイルとして扱えるため便利ではあるものの、転送先のファイルシステムPOSIX準拠でない場合に色々な問題が発生するのであまり使いたくはありません*7。なのでBorg Backupを使ってみることにしました。exFATでフォーマットされているMOBILEディスクにbackupsディレクトリを作成して、それをBorgのリポジトリにします。borg init -e repokeyで暗号化しています。また、紛失しないようにリポジトリの鍵をエクスポートして保管しておきます。

$ sudo pacman -S borg
$ borg init -e repokey /run/media/lufia/MOBILE/backups
$ borg key export /run/media/lufia/MOBILE/backups repo.key

上では手元のディスクを使いましたが、Google Cloudを使っているならCloud Storage FUSEの方が便利かもしれません。

$ git clone https://aur.archlinux.org/gcsfuse.git
$ cd gcsfuse
$ sudo pacman -S fakeroot # なければ入れる
$ makepkg -si

これで後はバックアップを作成するだけです。毎回コマンドを組み立てるのは面倒なので以下のスクリプトを書きました。

#!/bin/bash

set -eu

if [[ $# -ne 1 ]]
then
    echo usage: $(basename $0) repo >&2
    exit 1
fi
h=$(hostnamectl --static)
d=$(date +%Y-%m%d)
sudo borg create --progress "$1::$h-$d" / --exclude-from ~/lib/borg.exclude

コピーする必要のないファイルもあるので、borg.excludeシステムメンテナンスを参考にこのような内容です。

/dev/*
/proc/*
/sys/*
/tmp/*
/run/*
/mnt/*
/media/*
/lost+found
/var/run/*
/swapfile
/home/*.home
/home/*/.cache
/home/*/.local/share/Trash/*
/home/*/Downloads/*

ところで、systemd-homedを使っていると、/home/$user.homeに大きなファイルが作られています。これはホームディレクトリのLUKSイメージらしく、ユーザーがログインするなどでアクティベートされると/home/$userにマウントされます*8。このイメージは、手元では300GBほどあって、毎回のバックアップで対象とするには大きく時間がかかります。上のスクリプトではどうせ一人しか使わないので、必ずホームディレクトリはマウントされているものとして扱うことにしました。ちなみにアクティベートされたユーザはhomectl listすると分かりますし、homectl activateでアクティベートするようです。

$ homectl list
NAME  UID   GID   STATE  REALNAME HOME        SHELL    
lufia 60331 60331 active lufia    /home/lufia /bin/bash

1 home areas listed.

古いバックアップはpruneで破棄できます。

# 最新3つ残して破棄
$ sudo borg prune --keep-last=3 [-n] /run/media/lufia/MOBILE/backups

# 1年以内のものだけ残して破棄
$ sudo borg prune --keey-within=1y /run/media/lufia/MOBILE/backups

参考情報

日常の利用

感想など

トラックパッドに慣性スクロールが欲しいなど、まだ気になるところはありますが、これならデスクトップ環境として使えると思えるところまで設定しました。購入して電源を入れるだけで快適に使えるmacOSはすごいなと思うものの、一度設定してしまえばLinuxでもそんなに困らないはずだし、癖や好みの話でもあるので、しばらくこのままLinuxデスクトップで生活してみる予定です。

2022年1月追記

業務端末もLinuxにしました。

blog.lufia.org

セキュアブートやTPM2によるパスフレーズ省略についても書きました。

blog.lufia.org

*1:10行程度?

*2:後で知ったけどSwap File vs Swap Partitionによるとパーティションの方が印象良かった

*3:利用しているファイルシステムがBtrfsの場合はサブボリュームを採用するようです

*4:他のユーザーから見られない状態になるので意味はある

*5:Linuxカーネルコード、1行の文字制限を80字から100字まで緩和

*6:SECONDARYもあるらしい

*7:symlinkの未サポートやファイル名のcase-insensitiveなど

*8:イメージの種類によりファイル名の末尾が.homedirなどに変わる

Plan 9の権利がPlan 9財団に譲渡され、MITライセンスに変わりました

2021年3月23日に、ノキアから、Plan 9著作権Plan 9財団に譲渡する発表がありました。

www.bell-labs.com

翻訳はこちら。

okuranagaimo.blogspot.com

元々、AT&Tの一部門が独立してLucent Technologiesとなっていて、ベル研はそこに含まれていたけれども、いつの間にかノキアに買収されていたらしいですね。

何が変わったのか

以前のPlan 9はLucent Public License 1.02*1でライセンスされ、ベル研(plan9.bell-labs.com)により配布されていました。ユーザーはreplicaコマンドを使ってベル研の中央サーバからアップデートを取得し、必要ならサーバへパッチを送ることが行われていましたが、2015年1月を最後に、Plan 9のメンテナンスを行う人がいなくなり、しばらくしてからは*2ベル研のサービス自体も参照ができなくなっていました。

代わりに、0introさんにより9p.ioでplan9.bell-labs.comのミラーが提供されるようになり、今ではドキュメントの参照など基本的にこちらが使われるようになっています。他に、9legacyというパッチ集や9frontといったフォークが派生して今もそれぞれ活動していますが、9p.ioが配布する公式のソースコード自体は2015年のものから変わっていませんでした。余談ですがGoがサポートしているPlan 9は9legacyのことです。Go DashboardPlan 9イメージは9legacyの最新版を参照しています。

このように、ここ数年は残念な状況でしたが、今回の譲渡でPlan 9の権利はPlan 9財団へ譲渡されて、Foundation Activitiesによると9legacyのパッチが本家に取り込まれる告知が出ていました。

Preparing for a new release, including patches.

今後の運用がどうなるのかはわかりませんが、Goもplan9portもGitHubで運用されているので、Plan 9もそうなったら嬉しいですね。

Plan 9財団

Plan 9財団は2021年2月に、9fansでアナウンスされました。Plan 9界隈でよく名前を聞く人がメンバーになっています。

9fansでのアナウンス

Twitterアカウントはこちら

この財団は、現状ではPlan 9本体(従来はオープンではなかった1st〜3rd editionも公開されている!)のホストと、GSoCへの参加などを行なっているようです。Activityを見る限りでは2020年から活動していたようですが、まあ、2020年のメールにある署名は強い....

Forkはどうなるか

ここは完全に推測ですが、少なくとも9legacyのパッチは取り込まれることが告知されているので、9legacyは本家Plan 9に統合されそうです。9frontは、部分的にはバックポートされるかもしれないけれども、実装的にも思想的にもベル研Plan 9との差が大きくて、完全なマージは無理じゃないかな、と思っています。とはいえ9frontの方が進んでいるのは事実なので、前衛的な9frontと慎重な本家に分かれるんじゃないかな。plan9portは、以前rscさんが9fans/plan9port

Sorry, but plan9port is only aiming for compatibility with the original Plan 9, not the many forks.

と言っていたけど実際はいくつか拡張されているので、互換性を維持しながら変化していくかもしれません。Raspberry Piへの移植(9pi)は分からないけれど、これは9legacyに近いものなので、millerさんが望めばマージされるかもですね。

*1:SCOのゴタゴタがあってアップデートされた記憶がある

*2:2017年頃かな

Goアセンブリの書き方

Goアセンブリの書き方からビルド方法までを一通り調べました。Goアセンブリを書いたことのない人がコードを書いてリンクできるところまでは一通り書いているつもりですが、Goアセンブリの言語仕様を網羅してはいないので、興味があれば最後に書いた参考情報も読んでみてください。

この記事ではGo 1.16.xでAMD64命令セットを扱いますが、具体的な命令や値のサイズ以外は、他のアーキテクチャを使う場合でもだいたい同じだと思います。

アセンブリコードの書き方

GoのアセンブリPlan 9アセンブリを概ね踏襲していて、AT&T記法です。整数を受け取って、それに2を加算した値を返す関数func add2(i int32) int32を書いてみましょう。アセンブリのコードは.sファイルに書きます。また、アセンブリアーキテクチャに強く依存するので、Goの習慣にしたがってファイル名にはアーキテクチャ名も入れておきましょう。

func_amd64.s

TEXT ·add2(SB),$0-12
    MOVL i+0(FP),AX    // 引数iをAXレジスタに
    ADDL $2, AX        // 2を加算
    MOVL AX, ret+8(FP) // 計算結果を戻り値として返す
    RET

馴染みのない場合はおそらく何もわからないと思うので、少し丁寧に書きます。

Goのアセンブリでは、関数はTEXTディレクティブで開始します。上の関数は·add2という名前ですが、名前の頭に奇妙な·(middle dot/center dot; 0u00B7)が付いています。これはパッケージ名を区切る文字で、本来はmain.add2となりますが、アセンブリでは.(dot)が名前に使えないので、代わりに·を使っています*1macOSの場合、この文字はOpt+Shift+9で入力できます。Plan 9やplan9portならAlt..と順番にキーを叩けばいいです*2。そしてパッケージ名を省略するとリンク時に補完されるので、最終的にこの命令はmain.add2関数を定義することになります。関数名の後ろについている(SB)ですが、SBはStatic Base擬似レジスタで、プログラムアドレス空間の先頭オフセットを表します。「SBからの特定オフセットにmain.add2という名前をつけて以降の命令を関数ボディとする」が正確な意味らしいですが、関数を定義する場合は必ずこのように書く、と覚えてしまっていいと思います。

これでTEXT ·add2(SB)まで説明しました。その後に$0-12と続いている値は、演算ではなく$<スタックフレームのサイズ>-<引数と戻り値のサイズ>を表します。add2関数は、ローカル変数を持たないのでスタックフレームのサイズは0です。次に引数と戻り値のサイズですが、int32が2つなので8になると考えてしまいますが、GoのABIは戻り値の開始位置はワード長でアラインされるようです。AMD64のワード長は8なので、引数部分が(4+align)で8バイト、戻り値はそのまま4で合計12です。

次に MOVL i+0(FP),AX という行は、MOVLは32bitの数値を左から右へコピーする命令です。MOVxは他にもいくつかあり、それぞれ

  • MOVB(Byte): 8bit
  • MOVW(Word): 16bit
  • MOVL(Long): 32bit
  • MOVQ(Quad): 64bit
  • MOVO(Octo): 128bit

の値を扱います。Goのアセンブラでは、MOVxに限らず他の命令も、上記のような末尾文字で扱う値のサイズを決定します。命令の時点でサイズが決まるため、RAXEAXなどレジスタを使い分ける必要はありませんが、8bitを扱う場合はAHALも使えます。命令の後に続くi+0(FP)という表記は、FP擬似レジスタのオフセット0という意味です。i+の部分はシンボル名で、エラーを検出するため、FPレジスタを参照する場合はシンボル名が必須です。

最後に、コード中に現れる$nは即値です。この$TEXTディレクティブの最後に現れるものとは異なります。$(4+1)のように演算も行えます。

ビルドしてみる

では次に、この関数を使ってみましょう。参照する側は1箇所を除いてよくあるGoのコードです。

main.go

package main

import "fmt"

func add2(i int32) int32

func main() {
    i := add2(20)
    fmt.Println(i)
}

宣言だけのadd2関数がありますが、この宣言により、アセンブリで記述したmain.add2をGoの関数として参照できるようになります。ビルドする方法は普段通りgo buildです。

% go build -o a.out
% ./a.out
22

このとき、関数宣言に書く引数の名前はi+0(FP)の名前と合わせておきましょう。異なった名前にすると、go vetにより

% go vet
# asm
./func_amd64.s:2:1: [amd64] add2: unknown variable i; offset 0 is ix+0(FP)
./func_amd64.s:3:1: [amd64] add2: 8(SP) should be ix+0(FP)

のように怒られます。戻り値が1つの場合はデフォルトのretが使えますが、多値を返す場合は名前をつけましょう。

GoのABI(Application Binary Interface)

ABIとは、関数やシステムコールの呼び出し規約などの総称です。ABIについては以下の記事が分かりやすいなと思いました。

satoru-takeuchi.hatenablog.com

上のコードで見たように、Goとアセンブリの関数はスタックを経由して引数と戻り値を渡します。例えばmain

var i int32

i = 20
i = add2(i)

のようなコードがあった場合、add2を呼び出す前のスタック例(アドレスは適当)は

 ↑メモリの先頭アドレス
 0x120..0x127 [main関数から戻る際のリターンアドレス]
 0x128..0x12c [main関数の変数iが利用しているスタック領域]
 ↓メモリの末尾アドレス

のように積まれていますが、add2を呼び出すと

 ↑メモリの先頭アドレス
+0x100..0x107 [add2関数から戻る際のリターンアドレス]
+0x108..0x10b [add2関数の引数iで利用しているスタック領域]
+0x10c..0x10f [未使用(アラインメント)]
+0x110..0x113 [戻り値を書き込むスタック領域]
+0x114..0x117 [未使用(アラインメント)]
+0x118..0x11f [関数呼び出し前のBPレジスタ値]
 0x120..0x127 [main関数から戻る際のリターンアドレス]
 0x128..0x12c [main関数の変数iが利用しているスタック領域]
 ↓メモリの末尾アドレス

のように利用状況が変わります。このとき、SPレジスタは0x100を指し、FPレジスタは0x108を指します。なのでi+0(FP)とすると最初の引数を参照できますし、上では使っていませんが2つ目の引数があればj+4(FP)などと書けます。

SPレジスタとFPレジスタ

引数や戻り値を扱うとき、上ではFP擬似レジスタを使いましたが、go tool compile -Sgo build -gcflags=-Sで生成したアセンブリコードはSP擬似レジスタを使って引数などを参照します。i+0(FP)i+8(SP)は結局どちらも同じ場所を指すので、どちらを使っても支障はありませんが、FPレジスタの場合はアラインメント間違いなどを検出してエラーにしてくれるので、手書きする場合は基本的にFPレジスタを使う方が良いと思います。

ただし、複雑なのですがi+8(SP)8(SP)は必ずしも同じ場所を指すとは限りません。ハードウェアがSPレジスタを持つ場合、SP擬似レジスタを扱う場合はi+8(SP)のようにシンボル名が必須で、8(SP)のようにシンボル名を省略するとハードウェアレジスタを扱うことになります。

文字列とスライス

Goから引数として文字列またはスライスをアセンブリのコードに渡す場合、文字列の場合はポインタと長さ、スライスの場合はポインタと長さとキャパシティの3つが渡されます。

func str(s string)
func slice(p []byte)

の場合、アセンブリから参照する場合は以下のようになります。

TEXT ·str(SB),$0-16
    MOVQ s+0(FP),AX
    MOVQ s_len+8(FP),CX
    RET

TEXT ·slice(SB),$0-24
    MOVQ p+0(FP),AX
    MOVQ p_len+8(FP),CX
    MOVQ p_cap+16(FP),DX
    RET

独自型を使う場合

独自に定義した構造体などを受け渡しする場合、アセンブリから#include "go_asm.h"すると、それぞれのサイズやオフセットを定数で扱えるようになります。

type Point struct {
    X int
    Y int
}

func addpt1(p Point) Point

func main() {
    fmt.Println(addpt1(Point{X: 1, Y: 2}))
}

この場合、addpt1は以下のように書けます。定数を使うと、途中にフィールドが追加されたり、順番が変わったりしても安心ですね。

#include "go_asm.h"

TEXT ·addpt1(SB),$0-32
    MOVQ p+Point_X(FP),AX
    MOVQ p+Point_Y(FP),CX
    ...

go buildする場合、事前にgo_asm.hを用意する必要はなく、コンパイラが裏で作ってくれます。go_asm.hにどのような値が定義されるのか気になる場合は、以下のコマンドでgo_asm.hを出力できます。

% go tool compile -asmhdr go_asm.h *.go
% cat go_asm.h                                     
// generated by compile -asmhdr from package main

#define Point__size 16
#define Point_X 0
#define Point_Y 8

ここには現れてませんが、constで定義した定数も扱ってくれるようです。

他の関数を呼ぶ

ここまでで、Goの関数からアセンブリのコードを呼ぶ方法を書きました。今度はアセンブリ側からGoの関数を呼ぶ場合の手順です。結局は、呼び出す側で

 ↑メモリの先頭アドレス
+0x100..0x107 [add2関数から戻る際のリターンアドレス]
+0x108..0x10b [add2関数の引数iで利用しているスタック領域]
+0x10c..0x10f [未使用(アラインメント)]
+0x110..0x113 [戻り値を書き込むスタック領域]
+0x114..0x117 [未使用(アラインメント)]
+0x118..0x11f [関数呼び出し前のBPレジスタ値]
 0x120..0x127 [main関数から戻る際のリターンアドレス]
 0x128..0x12c [main関数の変数iが利用しているスタック領域]
 ↓メモリの末尾アドレス

のようなメモリレイアウトを作る必要があります。例として、

func neg(i int32) int32 {
    return -i
}

をadd2から呼んで、2つ目の戻り値としてその結果を返すコードを書いてみましょう。Go側のプロトタイプは

func add2(i int32) (ret1 int32, ret2 int32)

に変更します。FPから戻り値のオフセットを参照するため、名前をつけているところにも気をつけてください。以下アセンブリのコードです。Goアセンブリでは、PUSH命令やPOP命令を使わずSPを直接操作します。

TEXT ·add2(SB),$24-16
    // 1つ目の値は引数に+2するだけ、今までと同じ
    MOVL i+0(FP), AX
    ADDL $2, AX
    MOVL AX, ret1+8(FP)

    SUBQ $24, SP    // neg関数の引数と戻り値サイズ+BPレジスタの退避先を確保
    MOVQ BP, 16(SP) // 現在のBPレジスタをpush
    LEAQ 16(SP), BP // BPレジスタを新しいスタックに更新
    MOVQ AX, (SP)   // 最初の引数iを渡す
    CALL ·neg(SB)   // main.negを呼ぶ
    MOVL 8(SP), AX  // main.negの戻り値をAXレジスタに取り出す
    MOVQ 16(SP), BP // 退避していたBPレジスタをpop
    ADDQ $24, SP    // スタックサイズを戻す
    MOVL AX, ret2+12(FP) // 2番目の戻り値として返す
    RET

ところで、気づいた人もいるかもしれませんが、CALL命令を実行する前はSPを24バイト減算していて、0(SP)が最初の引数になっています。しかしmain.neg8(SP)が最初の引数であることを期待します。この差は何なのかというと、CALL命令が暗黙的に、SPレジスタへリターンアドレスをpushしていることによるものです。RETで戻ると、リターンアドレス分がpopされて、SPレジスタCALLする前の値へ戻ります。

また、他に注意した方が良い話題は、AMD64アーキテクチャの場合BPレジスタの値に連動してFP疑似レジスタも変わります。そのため、ADDQ $24, SPでスタック位置を戻した後で戻り値をメモリに書き出す必要があります。逆にしてしまうと、意図しないメモリを更新することになります。

ABI0とABIInternal

これまで、Goとアセンブリのコードがどのように値を交換するのかをみてきました。基本的にスタックを経由してそれを行いますが、これはABI0というルールに則ります。

Go 1.16時点では、利用できるABIはABI0しかありません*3が、以下のプロポーザルによるとレジスタを使った値渡しのABIも検討されているようです。これが安定すれば、ABI1として利用可能になるかもしれません。

ABIの調べ方

上記以外に、errorinterface{}など色々な型を渡したくなると思います。またはポインタをGCで管理したくなるかもしれません*4。その場合、go tool compile -Sまたはgo build -gcflags=-Sを使うと、コンパイルした結果を出力してくれるので、そうやって出力されたアセンブリのコードを眺めると良いかもしれません。ただし、最適化によって関数がインライン化される場合もあるので、//go:noinlineコメントで展開をしないようにコメントしておくといいでしょう。

% cat main.go
package main

import (
    "fmt"
    "io"
)

//go:noinline
func isEOF(err error) bool {
    return err == io.EOF
}

func main() {
    fmt.Println(isEOF(fmt.Errorf("error")))
}

実行結果の例です。長いので最初数行だけ。

% go tool compile -S main.go
"".isEOF STEXT size=105 args=0x18 locals=0x28 funcid=0x0
    0x0000 00000 (fn.go:9)  TEXT "".isEOF(SB), ABIInternal, $40-24
    0x0000 00000 (fn.go:9)  MOVQ (TLS), CX
    0x0009 00009 (fn.go:9)  CMPQ SP, 16(CX)
...

または、go tool objdump.oや実行ファイルからアセンブリコードを出力できますが、特に実行ファイルをgo tool objdumpした場合はとても長くなるので、目的の行を探すのは少し面倒かもしれません。

NOSPLITディレクティブ

ところで、標準パッケージのコードを見ると、アセンブリで書かれた関数のほとんどでNOSPLITディレクティブ(フラグ)をセットしています。

#include "textflag.h"

TEXT ·func(SB),NOSPLIT,$0
    ...

このNOSPLITruntime/textflag.h#defineされている値です。A Quick Guide to Go's Assemblerで、利用できるディレクティブが列挙されています。

#define NOSPLIT 4

通常、ゴルーチンは固有のスタックを持っていて、その初期サイズは決まっています*5。関数を呼び出したとき、コンパイラは「SPレジスタのアドレスと現在のスタック上限を比べて必要なら拡大する」処理を埋め込みますが、NOSPLITはこの動作を抑制するものです。実際に埋め込まれるコードは、この記事の最後に参考情報として挙げたGoアセンブリ入門によると、

again:
    MOVQ    (TLS), CX
    CMPQ    SP, 16(CX)
    JLS morestack // JBEと同じ意味
    ...
morestack:
    CALL    runtime.morestack_noctxt(SB)
    JMP again

といったコードが挿入されるそうです。また、$GOROOT/src/runtime/stack.goのコメントでは、スタックの大きさによって3通りに分岐することが書かれていました。該当部分を引用します。

guard = g->stackguard
frame = function's stack frame size
argsize = size of function arguments (call + return)

stack frame size <= StackSmall:
    CMPQ guard, SP
    JHI 3(PC)
    MOVQ m->morearg, $(argsize << 32)
    CALL morestack(SB)

stack frame size > StackSmall but < StackBig
    LEAQ (frame-StackSmall)(SP), R0
    CMPQ guard, R0
    JHI 3(PC)
    MOVQ m->morearg, $(argsize << 32)
    CALL morestack(SB)

stack frame size >= StackBig:
    MOVQ m->morearg, $((argsize << 32) | frame)
    CALL morestack(SB)

では次に、どういった場合にアセンブリで書いた関数へNOSPLITディレクティブ(フラグ)をセットすると良いのでしょうか。個人的には、正しい基準はあまり分かっていません。一切スタックを使わずCALLもしない関数を除いて、基本的にはNOSPLITを付与しないほうが安全に思えます。とはいえ公式のコードはほとんど全てNOSPLITを与えているし、$GOROOT/src/cmd/internal/obj/x86stacksplitprocessesを読むと、

// この定数は、実際は$GOROOT/src/cmd/internal/objabiで定義されている
const (
    StackSmall = 128
    StackBig = 4096
)

// これは擬似コードです
func processes(ctx, cursym, newprog) {
    p := cursym.Func().Text
    autooffset := p.To.Offset
    ...
    if autooffset < objabi.StackSmall && !p.From.Sym.NoSplit() {
        leaf := true
        if [CALL命令で引数が1つ以上ある関数を呼んでいる] {
            leaf = false
        }
        if [DUFFCOPY, DUFFZEROが使われている && autooffset >= objabi.StackSmall-8] {
            leaf = false
        }
        if leaf {
            p.From.Sym.Set(obj.AttrNoSplit, true)
        }
    }
    ...
}

のようにNOSPLITを付与しているので、利用するスタックサイズが小さくCALL命令も使わない関数はNOSPLITを与えておくと良いかもしれません。

(雑談)go buildを使わずビルドする

基本的にはgo buildを使うだけで十分なんですが、裏で何が行われているのかを知っておくと便利なこともあるかもしれないので紹介します。

まず、go_asm.hがなければ定数が扱えないので、Goのソースコードからgo_asm.hを生成する必要があります。これはgo tool compileで行います。

% go tool compile -asmhdr go_asm.h *.go

生成したら、アセンブリで書いたコードをビルドしましょう。.sに対応する.oファイルが作られたら正常です。go tool nmコマンドで、.oに定義されたシンボルや未解決のシンボルなどを調べられます。

% go tool asm -p main func_amd64.s
% go tool nm func_amd64.o

go tool nmが出力する2番目のフィールドはシンボルのタイプです。

  • T テキストシンボル
  • U 未解決のシンボル

などいくつかあり、それらはgo doc cmd/nmにまとめられています。

次に、アセンブリのコードがどのABIを利用しているか、をファイルとして用意しておく必要があります。今は手書きするコードなら全てABI0ですが、上で触れたように新しいABIが追加されるかもしれません。これはgo tool asmで行います。

% go tool asm -gensymabis -o symabis *.s
% cat symabis
def "".add2 ABI0

上で作ったsymabisgo tool compileに渡します。これを渡しておかないと、

main.main: relocation target main.add2 not defined for ABIInternal (but is defined for ABI0)

のようなエラーでgo tool linkが失敗します。

% go tool compile -symabis symabis -p main main.go

上で作ったオブジェクトファイル(.oファイル)を.aファイルにまとめます。cは新しくアーカイブファイルを作るというオプションです。

% go tool pack c main.a *.o

最後にリンクして終わり。

% go tool link main.a

一通りの手順をMakefileに書くとこのようになります。-Pオプションでパッケージ名を与えてますが、どちらでも良いと思います。

PKG=main
TARG=a.out

.PHONY: all
all: $(TARG)

$(TARG): main.a
  go tool link main.a

main.a: main.o func_amd64.o
  go tool pack c $@ $^

main.o: main.go symabis
  go tool compile -symabis symabis -p $(PKG) $<

func_amd64.o: func_amd64.s go_asm.h
  go tool asm -p $(PKG) $<

func_amd64.s: go_asm.h

symabis: *.s
  go tool asm -gensymabis -o $@ $^

go_asm.h: *.go
  go tool compile -asmhdr $@ $^

.PHONY: clean
clean:
  rm -f *.o *.a

.PHONY: nuke
nuke:
  rm -f *.o *.a $(TARG) symabis go_asm.h

最後に、ここで書いたgo toolコマンドで生成するオブジェクトは完全にgo buildと同じではありません。go buildの場合は同一パッケージに複数のfunc init()があってもビルドが通るように調整などがされるようなので、基本はgo buildを使うと良いでしょう。

おわり。

参考情報

物理本ですが、The Plan9 Assembler Handbookも参考になります。GoのアセンブラPlan 9のものを下地にしているので、大部分はそのまま役に立ちます。意外とインターネットにはまとまった情報がないので、個人的にはとてもおすすめ。

*1:同様に/も使えないので(division slash; 0u2215)で代用します

*2:lib/keyboardにリストがある

*3:runtimeパッケージなどではABIInternalもある

*4:FUNCDATAPCDATAを使うようです

*5:AMD64の場合は4KBらしいですね